(前回の続き) まずは、旦那くんや皆からの助言を仰ごうと思いました。 「え?お店? ドイツ語を話せないのに? …お寿司屋さんやりたいの?」 その国の言葉が不十分な移民は、だいたい、 母国料理のレストランなどで働いていることが多いようです。 もちろんカタコトで働くのは、たぶん十分ではないけれど、 お客さんと話す内容がいつもだいたい同じで、 他の仕事よりは対応しやすそうな印象があります。 でも 「いやあ、経験ゼロの私なんかが握るお寿司でお金を頂くだなんて、できません。 お寿司屋はやりたくないです。」 そう否定したら、案の定、かなり唖然とされました。 みんなは論理的で合理的な人達なんで 「うーん……。」みたいな感じで、黙ってしまいました。 確かに、その反応は常識的にもっともでした。 私は基本的にパソコン1台と通信環境があれば成り立つ専門職です。 それに比べて、店舗経営だなんてリスクが高すぎるし、なのに利益率は低すぎる。 なにより、肝心なドイツ語ができない。 そんなの考える前から決まってる。それなのに、なぜやりたいんだ?? (;°皿°) なぜ今の仕事を捨ててそんな仕事をしたいのか、何一つ、理解不能のようでした。 しかも、 「素敵なお店が空き店舗になったんです♡ (人´∀`*)+゚:。*゚+」 というキッカケが原因だから、 私だって絶句してから「アホかー!!」とつっこむに違いありません。 結局、 まるで、「宇宙旅行してみたい。」と言ったかのように、流されて終わりました。 当然です。ははは。 確かにあまりにも非現実的なので、こっそり自力で調べることにしました。 それがドイツ語でだろうと、興味があるからがんばれます。 ドイツ語学習もできて一石二鳥です。 とりあえず、あの辺りの既存空き店舗物件は、 想像通り、一ヶ月当たりの金額は手が届く範囲に思える賃貸料でした。 よーし、可能性はまだある。 そう思いながら、それと同時に、 「もし本当に借りたら、本当にこのままドイツで暮らし続けることになるけど、いいの?」 などと、相反する気持ちもあって、自分の中でも矛盾していました。 回想している今思えば、 当時、「できない理由を探していた。」のかもしれません。 「これこれこういう仕方ない理由により、私にはできない。残念だ。」 だって、今までと変わらない日常を選ぶほうが、楽です。 だからやりたいことがあっても、できない理由を探すほうが、とりあえず楽なんです。 しかも、自分が問題じゃなくて「仕方ない」っていう理由が、自分に一番都合がいい。 大人になればなるほど、わりとそういう人は多いようです。 そういう事情も増えるのかもしれません。 自分に興味があることを、やり遂げた人がいたとしても、 「あの人は、特別だからできたんだ。」 「あの人は、才能があるからできるんだ。」 「あの人は、運が良かったからできたんだ。」云々。 誰かがそうして打ち消しているのを聞くと、 以前の私は、人ごとながら少し寂しい気持ちになっていました。 もしそのやりたいことが、死ぬような危険はなかったり、責任とれる範囲とかなら、 まずは挑戦してみたら?できるかどうか調べてみたら?自分が奇跡の数%かもよ?って。 (でも今は、何としてでも欲しい未来じゃないのなら、それでいいのかもしれない、と思ってます。 私は私、別の人には別の人生、事情も気持ちもそれぞれなんで、それぞれの選択です。) 元々はそういう信条だったはずなのに、何もかも思うようにいかなかった外国暮らしで、 そんな自分も少しずつ変わっていったようです。 自分の言い訳に納得して楽したい気持ちと、矛盾しながら戦い続けて、 お店屋さんをやりたい気持ちがとりあえず勝って、ゆるゆると模索し続けていました。 私は、どんな人間になりたいんだ? 少しずつコツコツ、いろんな可能性を調べながら、 あのかわいらしいお店の窓ガラスに、不動産の連絡先が貼られるのを待ちました。 そして地元の不動産情報も確認していました。 私が何度もその建物を確認するので、息子はその空き店舗のことを ごく自然に「ママのお店」と呼ぶようになりました。 (〃'∇'〃) 「今日もママのお店、見るの?」 悪い気はしません。 この空き店舗だらけの道で、借りたい気持ちがある私にとっては、 もうこれがすでに自分のお店のような気がしました。 目の前に立ちはだかる課題はそっちのけで、 童話のようなお店の前では、脳内童話が始まっていました。 こまめにそのお店をチェックしていたところ、 ある日、内装工事が始まりました。 床のタイルなども全部剥がして掘って、本格的に工事をしています。 なんだろう? 古い建物だから、この機会に暖房設備を良くしてから貸し出すのかなぁ……? ドイツの不動産事情なんて、よくわかんないなぁ…。床暖房かなぁ? 引き続き、お店の窓ガラスに連絡先が貼られるのを待ちました。 そして地元の不動産情報もこまめに確認していました。 ここは東京と違って全てがのんびりだけど、 それにしても、まだなのかなぁ。 内装工事がやっと終わって、 やっとそのお店の窓ガラスに貼られたものは 新しいお店の、大きなロゴシールでした。 ( ꒪ω꒪ )!!!!! ここが空き店舗ストリートだろうと、あのかわいい建物の価値がわかる人がいたらしく、 前のお店が閉店する前からなのか、それとも直後なのか、 とにかく閉店後に借り手を告知募集することなく、もう新しい借り手は決まっていたようです。 もしくは、私が知らなかっただけかもですけど、 特別な建物だから、空く前からずっと予約待ちだったとしても、当然のような気がしました。 そうして、私の小さな楽しみは、唐突に終わりました。 しかも、窓ガラスに貼られたロゴマークは、 建物に全く似合わないようなデザインでした。 そうじゃないのに、と心の中で勝手に思いました。 (;´Д`)=з 「ママのお店、なくなっちゃったね…。」 私の悲しい気持ちを感じ取ったのか、息子が即座に打ち消しました。 (〃'∇'〃) 「あります! ママのお店、あります!」 そうして、 どこかにあるはずの「ママのお店」を、 息子と一緒に探すことにしました。 「ママのお店、どこかな? ここかな!?」 幼児と一緒に、街の空き店舗を見てまわるという、わけのわからない散歩。 そうして見ていると、どこのお店が無くなった、とか、 どこのどのくらいの面積の物件が、どのくらいの期間で埋まって、 どういう種類の新しいお店が始まったのか、少しわかるようになりました。 店舗面積が拡大していく人気店と、そうじゃないお店。 東京の常識では考えられない広告の打ち方や、お店のルール。 スタッフの数。営業日、営業時間。 いろんなことを注意深く見ていました。 そうしているうちに、他の現実的困難や、自分も病に倒れるなどして、 私のアン・シャーリー的な頭の中でさえも 「ママのお店」がただの空想として風化していく中で、 ある人から突然、良い話が舞い込んだのでした。
4 コメント
はなこ
5/11/2013 15:30:16
うわー!!
返信
ひな
5/11/2013 21:32:33
いつも楽しく読ませて頂いております。
返信
sen
6/11/2013 02:41:01
いつも楽しんで読ませていただいています。
返信
まる
6/11/2013 12:58:47
わ~♪今日も更新されてる(^-^)♪
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AuthorAlpenHausfrau Heidi ■免責事項 当サイトに掲載された記事情報及び意見や見解は、個人の感想レベルであり、その内容について何ら保証しません。情報の間違いなどに対して一切の責任を負いませんのでご了承下さい。 Archives
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