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ある晴れた日に

24/6/2012

4 コメント

 
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ダンナくんはケガをしました。
以前から気になっていた部分が、ふとしたキッカケで急に悪化したのです。

大きい病院に行かなくては。
でもオーストリアの病院だときっと保険がきかないよね。
ドイツで一番近いところはどこだろう?

あぁでも、ママとパパを病院まで迎えに行く約束の時間になっちゃうね。
困ったな。長い時間、車の運転はできないな。
どうしようか。
きっと、待ちきれないパパからすぐに電話がかかってくるぞ。

そんなことを話しながら
私たちはバタバタと出かける準備をしていました。

この日は、義母の退院の日でした。
義母は少し前から口で流動食を食べることも難しくなり、
食事を直接、体へ流しこむ管をつける手術をしたのです。

よく晴れた気持ちのいい日で、
義母も外に出られてよかったなとボンヤリ思いました。



しばらくすると、案の定、
ダンナくんのケータイが鳴り始めました。

きっと絶対、パパだな。

ドイツ語で話しているから内容はわからないけど
義父の声が漏れ聞こえました。

やっぱり。

ダンナくんがケガをした事情を話して、
義兄弟か叔母さんに迎えに来てもらえるようにするか、
それともしばらく時間をつぶして待っていてもらえるようにするか、
どっちかしかないだろうな。……どっちになるんだろう?

それにしても、ダンナくんのケガは大丈夫かしら。
車の運転なんてホントにできるのかな。

そんなことを考えながら私は仕度を続けていました。


電話を切ったダンナくんは
私にむかって言いました。








「ママが死にました。」




え?

びっくりしたけど
ダンナくんは日本語でそう言ったから、


そんな言い方だと比喩じゃなくて
本当に亡くなってしまった、って意味になっちゃうよ。
その言い方は間違ってるよ。


また変な日本語言ってる〜、と強引に思いつつ
まさかとドキドキしながら
ダンナくんが言った意味を確認しました。



「間違ってません。
ぼくのママは、死にました。」


改めてもう一度言われました。


「ど…、どうして!!!」

「ぼくもわかりません。病院に行きましょう。」



急いで病院に行くと、
義母は鑞人形のように静かに横たわっていました。

まただ。
昨年亡くした父と同じような、鑞の質感。
ママはこんな肌じゃなかったのに…。

「……元気だったのに!!」

思わず出た言葉。
ダンナくんに抱きついて、わんわん泣きました。
Picture
義母は歩くことも立つことも
枕を自分で直すことも、食事もできなくなって
自力での呼吸も怪しくなっていたけど
それでも義母はいつも元気でした。生きていました。

また当然会えると思っていたから
入院前に普通にさよならしたのに、どうして!!なぜ!!


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心臓麻痺でした。

義母は不治の難病で、
これから先は苦しくなる一方だったから、
ぽくっと、あんまり苦しまずに死ぬことができて
義母にとって良かったのかもしれません。

悲しすぎて、自分にそう言い聞かせるしかありません。

とにかく、
ダンナくんはケガのためすぐに手術となり、
しばらく入院することになりました。

ダンナくんが出張の時は
私と息子はオーストリアの家に避難するのが定番でしたが
今回は遠くから来る親族たちのために部屋が使われるので、そうもいかず、
ドイツの家で自力でサバイバル生活をすることになりました。

悲しむ間もなく、とにかく息子とふたりで留守を守って
生きていかなくてはいけません。


そう思っていても、急に涙が出て
止まらなくなります。
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義母が本当に好きだった。


きっと義母は天国に召された。
泣く必要なんてないのよ、悲しいことじゃないのよ、って
きっと義母は困った顔で微笑むに違いない。

わかってる。
心の準備も少しずつしていた。
何年もかけてお別れの準備ができたことは、
本人も皆にも、幸せなことだったと思う。

これが世界で一番不幸な出来事なわけじゃない。
訃報を聞いてすぐに車で駆けつけることまでできた。

近くで暮らすことができて、
義母の息子と孫がいる暮らしを日常にしてあげられた。

叔母さんたちや友人が毎日のようにお見舞いに来ていた。
きっと義母は幸せだった。

それでもただただ、今は泣きたい。

だっていつものあのリビングの椅子は空のままだ。
義母がどうだったかとかじゃなくて、
きっと、あの空席のことを泣いてるんだ。



実父の時の場合は
私が一人暮らしの期間も含めて長い間離れて暮らしていたから、
遠いところでまだ生きているような錯覚がありました。

でも一緒にいた義母が突然もう戻らないだなんて、耐えきれなくて、
昼間ときどき、ふいに涙をこぼしていると
いつもユーマがハンカチを持ってきて、ほっぺたにキスをしてくれました。

笑顔でそっと横に立っているのを見て、
この子は義母の孫で、ダンナくんの息子だなと思いました。


ダンナくんの手術も成功したそうで、
来週には退院できるらしいです。

辛くても悲しくても
私たちは、生き抜いていきます。








4 コメント
hiro
24/6/2012 07:39:06

こんにちは。おさびしいでしょうね。
私も去年大好きだった義母を、そして今月母を亡くしました。父は20年前、義父は10年前に亡くなりました。もう私には親と呼べる人が誰もいなくなりました。私は50代、それでも本当に寂しいです。誰でもとおる道と思ってもそれでも寂しいです。4人ともちゃんと長生きしてくれました。それでも寂しいです。 私の大切な人たちは悲しいこと苦しいこともあったけれどそれでもきっといい人生だったに違いないんだ、と思っています。今はありがとうという感謝の気持ちでいっぱいです。ずっとその気持ちを忘れずに生きていこうと思っています。ハイジさんもきっと同じお気持ちでしょうね。

返信
schnappy
25/6/2012 05:40:35

ハイジさん、慰める上手い言葉が見つかりませんが、先ずはお義母さまのこと、本当に残念です。お悔やみ申し上げます。
いくら長くないかも、と覚悟が出来ていても、実父さまに続きお義母さまが天国に旅立たれたのは本当に本当に悲しいことです。

私は主人の父を昨年事故で亡くしました。突然の別れに私達はただただ泣くしかありませんでしたが、「泣く」ことで少しずつ昇華していけるのなら、と思い、今でもたまに泣きます。(義父は「もう泣かなくていいのに〜」と言われそうですが/笑) 私は無理に我慢せず、泣きたいなら思いっきり泣けば良いと思います。

私の好きなある歌の一節に「紙でできた花でも構わない、大切なのは、その花を覚えていることなの」というのがあります。私達夫婦は義父との思い出をたまに話し、懐かしみます。故人をいうまでも忘れないこと。いつまでも心に行き続けると思います。
まぁ私がこのようなことを言わなくても、ハイジさん達のことですから、きっとお義母さまはハイジさんファミリーの中にキラキラと行き続けることでしょう。

旦那さまも大きな怪我をされて大変ですが、どうぞ自愛されて下さい。
大好きなハイジさん達が幸せなら、お義母さまもきっと天国で幸せに過ごせますから。

返信
なっぱ
26/6/2012 05:43:04

お久しぶりです。
お義母さまの病状はブログで理解していたけれど、突然の出来事に思わずコメントしました。
誰もが通る道と分かっていても、生きて会いたかったという思いが真実ですよね。
ハイジさん、悲しい時は沢山泣いてくださいね。

ダンナくんの手術が成功されて何よりです。
帰りを待つ間が長く感じられるでしょうが、元気に戻ってくる日が待ち遠しいですね。

上手なコメントが出来なくてすみません。
足跡ばかりですが、いつも見てますよー。
また来ますね。

返信
ある
3/7/2012 19:41:54

ハイジさま
このたびは、本当にご愁傷様でした。ずっとハイジさまのブログを読んでいて、知らぬ間にハイジさんのお義母さまのことが好きになり、心配していたので、今日この記事を読み泣きました。お義父さま、旦那さま、ユーマくん、そしてハイジさま、いつのまに私のとても近くにいてくれている感じです。お義母さまはみんなに囲まれてとても美しい人生をすごされたんですね。何もお手伝いできなくてごめんなさい、遠くからお義母さまのこと、ハイジさまのご家族のことおもっています。

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    Author

    AlpenHausfrau Heidi
    アルプスの主婦ハイジ

    ドイツかオーストリアあたりをウロウロしている主婦。絵を描くこと、文章を書くことが好き。一児の母。


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