思えば、ことの発端のひとつは、 あのステキで不思議なお店の存在です。 それはもう、ずいぶん前のことです。 時々、わたしたちが通る道には それはそれはかわいらしいお店がありました。 外国の絵本や児童文学に出てくるかのような建物です。 古びているけれど艶やかで重厚な木製の扉。 細工が美しい欧州アンティークのドアの取っ手。 強い日差しでペンキが少し白みがかった木製の鎧戸。 たくさん窓があって、鎧戸がついた窓がいくつも並んでいます。 ああ、なんて、なんて、かわいいんだ! (*´ェ`*)…♥” 童話に出てくるものが、本物が、目の前にあるよ! どうしてその建物が私に特別な存在なのか、ちょっと考えました。 このあたりでは冬の寒さがかなり厳しいから、大きなガラス窓がある家や店舗は 暖房や二重ガラスで防寒対策がしっかりしている近代建築物ばかりですけど、 たぶんこんな古いタイプの建築物で、 正面のガラスを大きくとって、窓がいくつもあって、 室内が自然光だけで明るいのは、珍しいからだと思います。 特別な建物のお店。 外からその姿を眺めるだけで幸せでした。 お店の中に入る勇気が出るまで、時間がかかりました。 というのも、このあたりの小さいお店は、店員さんが絶対必ず話しかけてくるからです。 ほとんどの店員さんが「お客様の欲しい商品は、私がすぐにご用意いたします。」みたいな プロフェッショナルな雰囲気で、その要望に見合う商品が無ければ 「それはありません。」と即答されて、 日本人的には、もう帰らなくちゃいけない空気がヒリヒリします。 勇気を出して店内に入ると、店内も想像通りにかわいらしく、 すてきな商品が並んでいました。 ドイツ人だと思っていた店員さんは、 フィンランド女性でした。 「ドイツ語は簡単よ!フィンランド語のほうが難しいわよ!」 「えええ!マジですか!」 そんなたわいない世間話をして、 私は絶対フィンランド語を勉強しないぞ、と心の中で誓いました。 珍しいアジア顔なせいか、うちの息子をとってもかわいく思ったらしく、 彼女は商品棚から、売り物として並んでいた小さな石鹸をくれました。 小さな息子の手に、小鳥の姿をした小さな石鹸。 あれっと不思議に思いました。 小さいけど特別な石鹸で、安いものではなかったので、いいの?と。 田舎だから、道を行き来する人も少なくて このあたりのお店屋さんは、どうして経営が成り立ってるのだろう?などと もともと不思議だったくらいなのに、 ここは店内の商品棚さえもかなり空きがある品揃えで、さらにプレゼント。 じゃあやっぱり何か買ったほうがいいかなと見回したけれど、 何かここで買いたくても、買いにくい物が多かったのでちょっと弱りました。 不思議だなぁ。 なんで経営が成り立つんだろう? つくづく不思議なお店だけれども、店内に入っても大丈夫なことがわかって、 外から眺めるだけでなく、それから何度か店内に入ってみました。 ああやっぱり店内もすてき! なんてすてきなんだろう。 でも不思議だ。 しばらく行けない日が続いた後、 いつものようにそのお店を眺めにその道を通ったら、 什器が全て撤去されて、店内はがらんどうになっていました。 閉店しちゃった!! (llʘิДʘิll) まわりは空き店舗ばかりです。 あの小鳥の石鹸の時から、 こうなる予感を無意識でボンヤリ感じていたことに がらんどうになった店内を窓の外から見て気がつきました。 店じまいが近いから、プレゼントしてくれたのかなぁ…。 あの不思議なお店がなくなってしまって、 楽しみがひとつ減ってしまって、本当に残念でした。 この古いお店…… どうなっちゃうんだろう。 (;ε; ) 現地の人には古い価値がわからなかったのか、 変に現代的に改築されてしまって 成れの果てとなった建物も見たことがあります。 せっかくこんなかわいい童話みたいなのに、 ここ、どうなるんだろう? じゃあ、私が借りられないかしら? (・∀・)は? ここで私、お店屋さんができないかしら…? いやいやいや、ドイツ語さえ話せないのに、そんなの無理すぎるでしょう? この近隣の、プロフェッショナルな店員さんたちを考えてごらんよ自分。 お客さんが欲しい物の、単語さえ理解できないでしょう? 自分に心の中でツッコミして、うなだれました。 なにせ、周りは空き店舗ばかりの立地です。 ドイツ人だって継続が難しいはずです。 いや、でも、そんな物件なら、私でも借りられるかもよ? いや、ダメだダメだ、いくらなんでも非現実的すぎる。 唇を噛みました。 ううん、そうじゃなくて、じゃあ現実的に、考えてみよう。 こんな自分にもできることがないか、ちゃんと調べてから決めよう。 そもそも認可とか、ここの法律とかその辺りどうなのよ? ちゃんと調べて、判断材料を揃えてから納得しよう。 がらんどうになった、その童話のようなお店を眺めながら、そう決断しました。 そうして、 恐ろしく非現実的な模索を、その時から始めました。 その紆余曲折いろいろあったことを、ここに少しずつ書いていきます。 一度きりの人生、やりたいことをやろう。 私は自分のこの毎日を、他の誰に強制されたのでもなく、 自分で選んで、自分に許諾を出して決めてるんだ、って、今とてもそう思います。 あとがき
ブログ記事のコメントやメールなど、みんな全てありがとうございます。 お礼のお返事が平坦な文章にならずにどう書いたらいいのかいいのか迷ってしまって、 いつも返信を書けずにいますが、いつも全部とっても感謝しています。 私がつい書けてしまう「そうじゃなくて違うんです〜」系ばかりだったお返事のせいなのか、 だんだん反応してもらえないような感じになっていたので、 あ、まだ楽しんでくれてる人がいてくださるんだ、って安心しました。 ドイツの祝日により、息子の学校がずーっと休暇だったので、 復活宣言(?)からまた日があいちゃいましたが、コツコツ更新していきます。 書きたい事がいっぱいです。ではまた!
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AuthorAlpenHausfrau Heidi ■免責事項 当サイトに掲載された記事情報及び意見や見解は、個人の感想レベルであり、その内容について何ら保証しません。情報の間違いなどに対して一切の責任を負いませんのでご了承下さい。 Archives
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